2時間目:コロナから考える「グローバル社会」
①そもそもなぜ新型コロナウイルスは発生したの?
★グーグルマップで中国湖北省武漢を探させる
→2019年12月、中国湖北省武漢において魚、爬虫類、こうもりなどが取引される市場の人たちの間で急性呼吸疾患が集団発生。
→コロナウイルスはいろんな動物の間で循環しながら進化しているウイルスだが、今回の新型コロナウイルス(COVID-19)はどこからきているかわかっていない。
★日本経済新聞新型ウイルス感染世界マップを使って何日に日本に感染者が出たか調べさせる
②なぜ世界に急速に広がったの?
★日本経済新聞新型ウイルス感染世界マップを使って世界に広がる推移を確認し、気づいたことを発表させる。
→最初はアジアを中心に広がっていたが、徐々にヨーロッパやアメリカでの感染が拡大し、3月中旬にはアフリカ大陸にも広くウイルスが蔓延している。
★なぜ急速に世界に感染が拡大しているのか予想させる
→100年前のスペイン風邪の時は船で感染が拡大したが、今回は飛行機の発達も拡大に影響を与えている。
★教科書を開き、「グローバル化」についての説明を読む。
→グローバル化とは世界の一体化(よく「欧米化」をイメージする人がいるがそれは誤り)。経済活動や情報、そして感染症も世界が一体化しているのが今のグローバル社会。
③日本にはどのようにウイルスが持ち込まれたの?
★武漢から大阪はおよそ2000km離れているが、どんな人がどのようにコロナウイルスが持ち込まれたのか予想させる。
★2020年4月28日のANN NEWSを見せる。
→当初は中国から来た人・帰ってきた人やプリンセス号がウイルスを持ち込んだが、今蔓延しているウイルスはヨーロッパから持ち込まれたもの。
④なぜ海外からの入国者を止められなかったの?
★すぐに海外からの入国を禁止した国もあるが、日本はなかなかできなかった。理由を考えさせる。
★以下のグラフから、訪日外国人の旅行消費額を確認する。
→これまで外国人観光客に日本の産業が大きく支えられていた。人の移動を止めるとお金が入らなくて困る人がいっぱいいる。
→また、関西大の宮本勝浩名誉教授の試算によると、オリンピック・パラリンピックを延期することで6408憶円の損失になる。
⑤WHOの役割とは?
★ほぼ世界中の国が他国民に対して入国制限をしたり国民に対して行動制限をするなど独自でコロナ対策をしている。任せた方がうまくいくか、任せない方がよいか考えさせる。
→基本的には各国に任せているが、ウイルスは当然国境関係なく広がっていくので、司令塔役割がWHOに求められている。
★公民の教科書「国際連合の目的とはたらき」のページを開き、WHOの役割を確認する。
→国連の世界保健機関WHOの事務局長は「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」「パンデミックとは、国から国へと感染が広がっている状態で、その広がりを制御できない状態」と2020年3月11日に発表した。
⑥感染の拡大が進むアフリカをどのように支援する?
★アフリカでコロナの蔓延が深刻化しているニュース記事を紹介する。
「アフリカでは医療機器や、医師などの人材が不足していたり、武装勢力との衝突が続いていたりする国が少なくないうえ、貧しい人たちが府営サイナスラムで密集して暮らしている実態もあり、感染対策は困難を極めています」(2020年4月26日NHK NEWS WEB「アフリカ 感染者3万人に迫る 新型コロナウイルス」)
★世界は(日本は)感染の広がるアフリカの国々に支援をすべきかどうか、するとしたらどのような支援をすべきか議論させる。
- 日本が医療チームを派遣すべき
- 日本だけで医療崩壊が起きているので現実的に難しいのではないか
- お金や薬などを支援する
- 国連からも他の国に支援をもっと呼び掛けるべき
コメント
面白い内容の授業だなと感じました。特に3時間目については子どもに近い問題かつ政府の外出自粛の政策が悪い方向に影響している例であり、最後の「政府の方針に従うだけではなく、これから自分はどう行動すべきか考える」という態度が求められていることを伝えるにはもってこいの内容だと思います。しかし、逆に子どもに近すぎる分、実際にこのことで悩んでいる子どもが教えられる側にいる可能性は見る必要があります。
また、単元構成として1時間目が国内政治・憲法、2時間目がグローバル化、3時間目が国内政治とコロナ見る視点を変えています。多様な視点を子どもに提供できるというメリットはありますが、3時間目と1,2時間目の内容がつながっていないようにも感じます。ここではいっそ「コロナと国内政治」「コロナで見るグローバル化」と視点をより絞った単元指導計画を分けて作るのはどうでしょうか。
細かいことではありますが、2時間目④「なぜ海外の入国者を止められなかったの?」で使われている教材ですが、観光客に産業が大きく支えられていたということを言いたいのであれば、「産業全体の中の観光(特に外国人)」の割合を示した方がいいかと思いました。
興味深く読ませて頂きました。
私が中学3年生でこの授業を受けたらと思うと、あまり前のめりにならないかもです。
現在、情報は溢れていて、興味があればいろんな方法で知ることが出来ます。
元々政治に興味を持っている生徒、また実際コロナで困った事態になっている生徒(例えば幼い妹、弟がいて親の仕事に影響が出ている、親が飲食業を営んでいるなど)には、響くことはあるかもしれませんが、その他の生徒にどこまで響く内容かというと、どうなんでしょうか。(憲法とか出てきてところで、…となるかも、私でしたら。テストの為に覚えるかもしれませんが。)
今の暮らしと政治の関わりに興味を示して、理解することを目標とするなら、まず、生徒が興味を持ちそうな項目1つ、2つに絞り、生徒が「なるほど~」ボタンがあるなら、「なるほど~」「なるほど~」と押したくなる内容から、このコロナの件をきっかけにするのはいかがでしょうか?「政治は、自分の生活の影響がある」という印象を持つことで、別の項目についても、聴き方、伝わり方が違ってくるのではないでしょうか?
働きだして税金を納めたり、子育てしてると、政治についても気になることはあっても、やはり、ここでも、政治に興味のある大人、本当に困ってるいる大人しか目を向けない社会があるかもしれません。
そう思うと、政治と暮らしがつながっていると理解する教育の時間は大事と思います。教科書の内容をただ覚えてよしとする教育でなく、きちんと伝えて理解してもらう教育を受けた若者が社会人になった時には、今と違う社会が出来ているのではないでしょうか?
私個人的には、学生時代、全く政治に興味を持つことなく過ごした生徒のひとりです。ただ、中学生の時に、「税について」の作文を書く機会があり、初めて、「税金て何?」と親に尋ねたことがあり、親の解答は、お酒を取り上げ、税金がかかっている話をしてくれて、とてもわかりやすく理解出来て、それが、社会人になって政治に興味を持つ時に、政治は意外に身近なことが関係していると考えられるようになりました。
あと気になりましたのは、「正義」という言葉。「正義」は、いろんな方面の「正義」があり、ひとつの方面からの「正義」だけが全てではないと思います。
ブログ、生徒に伝えたいという熱い思いが溢れていて、素敵と思います。
返信が遅くなりすみません。ご丁寧にメッセージいただきとてもうれしいです。読んでいただきありがとうございます。いただいたご指摘は今後の授業づくりに生かせていただきます!