【読書会しました】『美容整形と化粧の社会学』を読んで

性教育

先日、谷本奈穂(2008)『美容整形と化粧の社会学』の本を読んだ感想を語り合う読書会をしたので、その読書会で出た論点をいくつか紹介したいと思います。

べっきがこの本を読んで「わかる!」と思ったこと

私がこの本を読んで一番共感したのは以下の点です。

よって、美容整形の文脈で語られる自分らしさとは、身体をそのまま受け入れるものではない。また身体を内面に合わせて作り変えることでもない。それは、今ある身体を生かしながらよりキレイに見えるよう磨くことなのである。いわば、「身体のマイナーチェンジ」、それが整形言説における自分らしさであろう。したがって、そこには、単に手術によって魔法にかけられたがごとく変わったという受動的な自己像ではなく、自らをキレイに表現したいという能動的な自己像が見られる。(p.104)

この本は「人目を気にして整形するのはよくない」という立場をとっていません。むしろ「整形をする人は自己満足のためにやるのだ。化粧の延長線上なんだ」ということを言っています。

私は「キレイ」になりたいと思ってメイクをするし、服装や髪形を気にします。気にしすぎてつらくなるときもあります。

これは外圧的なルッキズムによるものなのか、自分の内面から自然に湧き上がってくるものなのかわからないでいましたが、「今ある身体を生かしながらよりキレイに磨くもの」という説明を読んで納得しました。(しかし外圧的なルッキズムもあることも後述。)

「身体は神や親にもらったもの」だから傷つけてはいけない?

読書会で話題になったのは「身体を自分以外の誰か(神であれ親であれ)がもっているとする意識」(p.14)について。

その考え方自体もわからないわけではないが、「神からもらった身体だから傷つけてはいけない」という言葉は反証(批判)不可能だからずるいよね、と思いました。

「親からもらったもの」というのもわからなくはないけど、じゃあ親の所有物で自己決定できないのか?とも思います。「親からもらったもの」という言説はまだ反証可能です。

結局、自己の身体をどうしたいか(整形したい・中絶したい、など)自分で(女性自身で)決めることを阻みたい人が言っているのではないでしょうか。

美しさの基準は誰が決めるのか?

読書会に集まったメンバーで「メイクや整形などの身体加工は自由で、自分で自分のために決めていい」ということは一致しました。では、メイクや整形、ダイエットなどをしたいと思う気持ちはどこから湧いてくるのでしょうか?

読書会のメンバーの間では、自分の「こうなりたい」という思いはメディアの影響が大きいのではないかという話になりました。

メディアで見る女性は大体が目が大きくて肌が白くて細い人ですよね。そのことの弊害は「かわいいとはこういうことだ」と視聴者側に思わせるだけでなく、視聴者(自分)が自分の良さを引き出すようなメイクをしようとしたときに参考になる人がいないという問題もあるのではないでしょうか。

その点、私は自分の目が小さいことがずっとコンプレックスだったのですが、最近のK-POPアイドルは目が大きいわけではないけどかわいいアイドルも出てきて、とてもとても勇気づけられていますし、「こういうかわいさの種類なら自分も近づけるのではないか」と思うことができています。

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TWICEのダヒョン
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オーディション番組ガールズプラネット999に参加していたツァイ・ビーン
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NiziUのアヤカ

本書にも「もう普通に、雑誌に載ってるお化粧をそのまま自分に持ってこれたりもできるので、そういう気にしなくていいというのがすごく助かっています」(p.89)と話す二重整形をした女性のインタビューが紹介されていますが、基準に合わせていきたいという心理が働きやすい現状で、基準が多様にあることは重要なのだと思います。

学校制服はルッキズム規範を強める?

多くの学校ではメイクや髪形、服装など生徒が自分で自分の見た目を加工して表現することが基本的には認められません。

学校の制服には様々な目的がありますが、見た目を統一することもひとつの目的です。

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学校制服の良い点はどのようなことだと思いますか。(複数回答)

「毎日の服装に悩まなくていい」「経済的である」という機能的な理由のほか、「学生らしく見える」、「服装による個人差がでなくていい」といった見た目の点でのメリットもよく挙げられます。

加工していない髪と顔で、服はみんな同じ制服で、「加工しないこと」そのものが重視されていると言えます。ルッキズムの観点から言えば、加工しない自分のありのままの姿を認められるようになることも重要だと言えるかもしれません。

でも、加工しないことで自分のコンプレックスが目立ち、自己肯定感が下がってしまう弊害も大きいのではないか、自分の良さを引き出す加工を認めることで「自分らしさ」を認めることもできるのではないか、とも思っています。

美容整形と化粧の社会学―プラスティックな身体 | 谷本 奈穂 |本 | 通販 | Amazon

とても面白い本で、個人的に勇気づけられる本でもありました。おすすめです!

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