研究発表で指摘されたくないコメント7選

大学院生生活

私がこれまで参加した研究発表会(研究大会、卒業論文・修士論文発表会など)(分野は社会科教育学)で「これを指摘されたら痛い!」と感じたコメントを7個紹介します。

また、私は人の研究を聞く時もこの点が抜けていないか確認しながら聞いています。

(本当はこういう記事はペーペーの修士課程の学生が書くんじゃなくて、プロの研究者の先生が書くべきものなのですが、今の時点で書けることを書きます。)

①研究の目的と方法(または問題意識と結論)はあっていますか?ずれていませんか?

研究の問題意識に整合した方法や結論になっているのか確認することは必須です。

②なぜその〇〇(テーマ、方法、題材、分析枠組み…)を選んで研究を行ったのですか?他の〇〇ではだめなのですか?

研究を始めたばかりの時点では「そのテーマがいいと思ったから」とか「その分析枠組みしか知らないから」みたいな説明になりがちですが、研究発表をするときには論理的な説明が必要です。

③先行研究のどのような課題をどのように乗り越えていますか?その研究の先行研究上の位置づけは何ですか?

先行研究を調べて並べただけで終わっている研究がたまに見られます。

私も十分に先行研究を検討しないままインタビュー調査に行ったことがあるのでよくわかります。調査したり授業を作った後から、先行研究上の意義づけを行うのは簡単なことではありません。

④その結論はありきたりな結論のように見えますが、新規性はどこにありますか?もっと深い考察、別の角度からの考察が必要なのではないですか?

こんなアプローチの研究は今までになさそうだと思って研究してみたけど、あまり新しい発見がなく研究しなくても予想できるような結果になってしまった、ということはよくあります。ここを乗り越えるのが一番難しいかもしれません。

「このような分類で分けて分析したのは新しい」とか「よく見られる教育活動に対してこのような意義もあるのではないかと示唆できたのは新しい」とか言えるといいですね。

複数の教師や生徒を調査した場合は、どのような傾向がみられるか群に分けて、そしてなぜ違いが表れるのか分析することも、考察を深めるための一つの手法です。

⑤どのような方法で調査・分析したのか不明確です。どのような方法で調査・分析すれば同じ結果が出ますか?

聞いてきたインタビューを文字起こしして読み直して、印象深かった箇所をなんとなく選んで抜き出して紹介するだけではそれは「インタビューの感想レポート」になってしまいます。

なぜそこを抜き出したのか、理由を示して根拠づけることができれば「感想レポート」から一歩脱出できます。

このような指摘をされないためには、似たような手法を用いている先行研究の真似をするのが一番です。

⑥その研究では限られた対象を調査しており、その研究結果は一般化できますか?

質的研究は少数のケースしか当たれないので、その答えが全体の傾向を反映しているかとなると、その保証はありません。しかし、調査対象者の考え方やおかれた環境、時系列変化など含めて詳しく調べ、相互に関連づけて把握することによって仮説を立てることができます。(※1)

私がよいなと思っているのは岡島(※2)の論文での記述です。

「本研究の調査対象の人数は,先行研究に照らして決して少なすぎる人数ではないものの,限られた教員を対象とする調査という限界はある。しかしながら,インタビューデータに表れた教師の教科についての語りから,中学校社会科教師が 形成し得る教科観はどのようなものか,その傾向を探ることは可能であろう」

⑦その研究は現場にどのように役に立ちますか?

教育の調査研究に対しては必ず「あなたの研究は、社会科教育の改善にどのような貢献をしてくれるのですか。私たちが気づかなかった課題を暴露したり、課題の解決策を示唆してくれたりするのですか」といった問いを持つことが重要です(※3)

これらはどれも超基礎的なもので外せないものばかりですが、実際には全部抑えるのは簡単ではありません。

ぜひ皆さんも研究に取り組むときはこの7つのポイントが抜けていないか確認してみてください。

≪参考文献≫

※1:谷富夫・山本努(2010)『よくわかる社会調査プロセス編』ミネルヴァ書房

※2:岡島春恵(2018)「中学校社会科教師の教科観の形成に関する事例研究―教科観形成の多層性と多面性に注目して―」『社会科研究』第88号、pp.13-24

※3:草原和博・溝口和宏・桑原敏典編著(2015)『社会科教育学研究法ハンドブック』明示図書

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