「これからの男の子たちへ」を読んで

性教育

オリンピック組織委員会会長の発言

2021年2月3日JOC臨時評議員会での森喜朗会長の性差別発言「女性がたくさん入っている理事会は時間かかる」が話題となっています。

署名運動も始まりました。

キャンペーン · 女性蔑視発言「女性入る会議は時間かかる」森喜朗会長の処遇の検討および再発防止を求めます #ジェンダー平等をレガシーに · Change.org

そしてこの事件に触れたとき、つい2日前に読んだばかりのこの本『これからの男の子たちへ』の冒頭で著者が述べていた言葉を思い出したのです。

「むしろ、彼らを反面教師として、これから成人する男の子たちがそうならないためには、どういうことに気を付けて子育てする必要があるのかを(略)考えなくてはいけないのではないか」(P.9)

「有害な男らしさ」とは何?

この本の中で私の印象に残ったのは「有害な男らしさ」という言葉です。

「有害な男らしさ」については以下のようにまとめられています。

「(「有害な男らしさ」という言葉には)社会の中で「男らしさ」として当然視、勝算され、男性が無自覚のうちにそうなるように仕向けられる特性の中に、暴力や性差別的な言動につながったり、自分自身を大切にできなくさせたりする有害(toxic)な性質が埋め込まれている、という指摘を表現しています」(p.22)

「「男らしさ」を良しとする価値観は親や教師の言葉やメディア、社会構造など多くのところで見られる。そしてその価値観がインストールされた結果、競争の勝ち負けの結果でしか自分を肯定できなかったり、女性に対して「上」のポジションでいることにこだわりすぎて対等な関係性を築くことに失敗してまったり、自分の中の不安や弱さを否定して心身の限界を超えて仕事に打ち込んでしまったり…といったことが男性にしばしば起こっているのではないか。」(p.22)

もちろん「男らしさ」に含まれる要素すべてが悪いことばかりではなく、向上心や克己心の源になるし、社会的に成功することも勇敢に行動することもいいことです。

しかしこの箇所を読んで私は改めて「男だってしんどいんだ」というような言葉の意味を理解しました。

しかし、「男だってしんどいんだ」で終わってしまっても男女の対立が深くなるだけでどの性別も幸せになれません。

「男らしさ」から自由になるためには?

「有害な男らしさ」がもし自分に埋め込まれている、埋め込まれかけていたらどのようにそこから脱却できるのでしょうか。

この本を読んで大事だと思ったことは二つあります。

一つ目は「言語化する力」です。

泣いている男の子に「男だから泣くな!」と言われがちで悲しかった気持ちを言語化されないまま育てられがちなことが事例としてあげられていましたが、自分を不快だったり不安にさせている原因を把握する訓練が足りていない男性は女性よりも多いようです。

女性よりも男性の方が2.2倍も自殺者数が多いのも弱みを開示できないことが理由にあるかもしれません。

また、女性はこれまでも男女の不平等について声をあげてきた歴史がありますが男性にはまだそのような歴史やロールモデルも多くありません。

そして二つ目は「自分と向き合う勇気」です。

ジェンダーの問題に向き合うためには、男性であることだけで持ってしまう特権があることを知識として学ぶことに加えて、「自分も誰かを傷つけることがあるんだ」という自分の弱さに向き合う勇気が必要だと、この本の中で著者と対談した小島慶子さんは話します。

「人間誰しも、偏見にとらわれて無意識に誰かを傷つけることがあるんだと成人する前に気づけば、そこから気をつけようと学習もできるんですが。その経験がないまま成長して、いきなり自分の偏見を指摘されると、なんだかすごい攻撃を受けたかのように感じてしまう。」(p.211)

これは男性にかかわらずすべての人に言えることで、常に自分も誰かを傷つけているかもしれないと思えるようになることが大事なのではないでしょうか。

これからの私にできること

私、女(シスジェンダー)、22歳、教員志望、という立場でできることは二つあると思っています。

一つは、自分が傷つけられたときにちゃんと怒ること。私はあんまり人に対して怒ったりすることが得意ではないのですが、伝えようとしないと伝わらないことも多いと最近特に思っています。

二つ目は、もっと「男らしさ」が築かれる社会的な背景を学ぶことです。これに向き合わなければいつまでたっても「女はつらい」「男だってつらい」のいたちごっこです。

そして私からこの文章を読んでくださっている男性にお願いしたいのは、旧来の「男らしさ」にとらわれず、かつ、マジョリティとして性差別に物申す、そういう男性の「あの人みたいになりたい」と思わせられるようなロールモデルになってもらえないか、ということです。

このことは本の最後(p.258)にも触れられていました。

「女性のリーダーのロールモデルが少ない」などということはよく言われますが、旧来の男らしさにとらわれないロールモデルが少ない、という問題もあるのだなと思いました。

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