主体性の育成に何が必要か?

主権者教育

新学習指導要領のキーワードの一つに「主体的で対話的で深い学び」というものがありますが、今回のテーマは「主体性を育てること」について。

なぜ「主体的な学び」が求められるようになったのか、一般的によく言われることをざっくり説明すると「これまでは教師が子どもに一方的に知識を詰め込むような授業が行われていて生徒は受動的に学んでいたけれど、これからの時代は学校を卒業しても自ら学び考え続けることが求められるようになった」というわけです。

しかし「主体性とはなにか?」「主体性を(強制的に)学ばせる、というのは主体的な学習と言えず、矛盾しているのではないか?」「どうやって主体性を教え、どうやって主体性を評価するのか?」など、様々な論点があります。

今回は私が考えた「主体性」について述べていこうと思います。

そもそも主体性とは何か

教育学者の溝上真一は主体的な学びについて3つの学びから構成されると述べています。

(しらす先生に教えてもらいました)

課題依存型(与えられる課題がおもしろければ主体的に学ぶことができる)

自己調整型(受験などの目標に向かって自分で手段を選択し計画を立てて主体的に学ぶことができる)

人生型(人生の目標やアイデンティティの形成のために、つまり学習に意味づけをしながら主体的に学ぶことができる)

学習指導要領では、主体的な学びについて以下のように説明されているのですが、溝上真一の考える3つの要素が入っているようです。

「学ぶことに興味や関心を持ち(課題依存型)、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見直しをもって粘り強く取り組み(人生型)、自己の学習活動をふり返って次に繋げる(自己調整型)学び」

「主体性」を「学ばせる」ことは矛盾しているか?

日本国語大辞典では主体性について「他に強制されたり、盲従したり、また、衝動的に行ったりしないで、自分の意志、判断に基づいて行動するさま」と定義されています。

では「主体的な学び」を目指して学校で先生が何かを準備して指示して学習させることは「主体的な学び」と言えるのでしょうか。

結論から言うと、「主体的な学び」を「学ばせる」ことはたしかに矛盾します。しかし「主体性」を育成できないわけではないと思います。

そもそも、完全な「主体性」は学校でも社会でもありえないのではないでしょうか。人は必ず何かに影響を受けて考え、行動しているからです。

だからこそ、「自分はどんな環境にいるか?」(自分の立場のメタ認知)ということを自覚したうえで、「どうなりたいか?」「何を実現したいか?」(考える目的・目標をもつ)ということを考えて行動することが「主体的な個人」として大事なのではないかと思います。

例えば教員養成課程の中では、教員志望の大学生に「そもそもなぜ社会科を教えるのか」「教員はどんな縛りがあるか」と考えさせることが、制限のある環境の中で主体的に教育活動を行うことができる教員を育成することにつながるのではないでしょうか。

そして小学校や中学校、高校では、自律的に学ぶ方法を教えること、学ぶ楽しさを経験させること、学ぶ意味づけをさせること、そして子どもが教員の指示や校則の中で「主体的?」な行動を求められていることを自覚させることが「主体性」の育成に必要なのではないか、と思いました。

この議論は先日のオンライン社会科・公民科研究会でも議論しました。

「主体性」は個人の資質の問題?

今日の哲学対話で考えたのは主体性を発揮しにくい社会の中で発揮できる主体性を育成することの難しさについてです。

主体性を育成すると言ったら本人の資質としての主体性のことばかり議論されるけど、個人の主体性が発揮されるかどうかは環境に大きく左右されると思っています。

本人の資質としての主体性をいくら学校でおぜん立てして育成しても、主体性が発揮しにくい社会(学びを強制されない場所や、上司の意見に従うことだけが求められるような環境)ではどうでしょうか。

学ぶことが決められていない状態で学ぶ力を育成するための手立てとして自由研究やPBLのようなものがありますが、主体性が求められていない場所で発揮できるような主体性を育成するような学習はあまりありません。

主体性が求められていない学校で主体性を認めてしまうと、子供が自分の権利ばかり振りかざすようになりそうだし授業が荒れそうだし嫌だと思う人も多いと思います。実際難しいですよね。

しかし、主体性を発揮しにくい社会で発揮できる主体性を育成するためには、そのような反体制的な主体性も積極的に受け入れる必要があるのではないかと思います。

いろんな主体性が学校の中で認められるような環境になっていないと「教師にとって都合の良い主体性」が求められていることが子どもに伝わって、結局客体的な子どもが再生産されるのではないでしょうか。

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