外国につながりのある子どもに必要な社会科教育とは?

主権者教育

近年、日本に住む外国につながりのある子どもの数が増えていることはご存じの方も多いでしょう。

現在、日本の22.7%%の学校に日本語支援が必要な子どもが在籍していますが(※1)、母語はフィリピノ語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、と様々であり、一般の教員による指導は困難を抱えています(※2)。

では、外国につながりのある子どもが受ける社会科の授業についてはどのような課題があるのでしょうか。

これまで外国につながりのある子どものための社会科授業の研究は主として日本語教育学の領域で進められ、彼らの学習上の言語的課題の具体的事実とその解決方法についての研究が進められてきました。

しかしそれだけでは「いかに在籍学級で理解できていない教育内容を補うか」という文脈が支配的で、「日本の子どもたちのためにつくられた」教育内容に疑問を呈することができていないと南浦(2013)は述べています。

南浦涼介(2013)の主張

今回読んだのは『外国人児童生徒のための社会科教育~文化と文化の間を能動的に生きる子どもを授業で育てるために~』(明石書店)です。

この本によると、 現状日本で行われている多くの外国につながりのある子どもに対する社会科授業は、その目的が「日本社会の理解」という部分に置かれており、日本社会への「同化」を目指したものとなっています。

もちろん日本社会を理解することも大事なのですが、外国につながりのある子どもとその家族をつなげるために、または将来像を描くために、あるいは子どものアイデンティティ形成のためには、 移動後の社会だけでなく移動前の社会との関係も保持する「統合」を目指した授業が必要だと述べられています。

社会科学習の二次元モデル(南浦、2013)

だから今後はことばの学習としての側面も考慮しながら、子どもが有してきた社会についての知識や経験、関心のあるテーマ、今後のキャリアにからめた社会科授業を構想し、学習に引き込んでいくための手立てを考える必要があります。

今後の課題

とはいえ、 外国につながりのある子どもの背景個々に応じた社会科教育を実施したくても、子どもの抱える背景は多様であり、その子にあった教育を実施することは難しいでしょう。

例えば、フィリピン出身の子どもに、フィリピンのサリサリ・ストアと日本のスーパーマーケットを比較させる授業を行おうとしても、その子どもがサリサリ・ストアにあまり行ったことがなく、興味が持てないかもしれません。

また、日本に永住するつもりの子どももいれば、いつかは母国に帰りたいと考えている子どももいるでしょう。

一斉授業では個々に合わせた授業が難しいかと思いますが、取り出し学習のような形で個別で授業をすることがある際は取り組んでみたいなと思いました。

また、一斉授業でも 日本を形成している地理や歴史、政治、経済、倫理などが、世界と比べてどのような特徴があるのか、今後世界の中の日本はどのような役割が求められるのかグローバルな視点で考えさせることは十分可能です。

そしてそのことは外国につながりのあるだけでなく、 日本国籍の両親から生まれ、日本で育った子どもにとってもグローバルな人材として有意義なものとなるでしょう。

≪参考文献≫

※1: 文部科学省総合教育政策局・男女共同参画共生社会学習・安全課「外国人児童生徒等教育の現状と課題」2019年8月14日

※2: 早野慎吾・松井洋子・田中利砂子(2008)「外国人児童の教科書理解度に関する研究―社会科教科書を用いた語彙調査から―」日本語教育学会『2008年度日本語教育学会秋季大会予稿集』pp.158-165

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