性教育は主権者教育だ

性教育

性教育と主権者教育は別物だと考えている人も多いのではないでしょうか。

性教育は体の発達や生殖について保健体育の科目で教えるもの、主権者教育は選挙など政治参加について社会科で教えるもの、というイメージが強いので別物に感じられるかもしれません。

しかし私は、性教育は主権者教育だと考えています。

主権者教育としての性教育

主権者教育とは民主的な社会(みんなのことをみんなで考えて決める社会)の構成員を育てる教育です。

そしてそのためには自分の意見・立場も大事だし、他の人の意見・立場も大事なんだと捉えることが重要です。

社会で生きている限り誰かから影響を受けます。自分の生きづらさ、苦しさは自分だけのせいではありません。

同時に、自分も誰かに影響を与えます。

身体の接触で物理的に直接影響を与えることもあるだろうし、「彼氏・彼女がいることがかっこいい」というような意識をもつことで性的マイノリティの立場の人に生きづらい想いをさせるような心理的な影響を与えることもあるかもしれません。

「自分と相手を尊重する」という人権思想を性教育と主権者教育は共通して持っています。

そういった意味で性教育は社会の構成員を育てる主権者教育と言えると考えています。

現状の性教育は…

性教育はその内容から「命の教育」と言い換えることができます。

例えば月経について教える時、月経を肯定的に受け止めさせるための内容を教えることや、月経による不快症状を予防すること、上手に対処することにつながる教育内容・方法を教えることが重要であると言われています。(※1)

しかし、それでは単純に生物学的な仕組みの説明で終わってしまったり、命の大切さを強調する道徳教育で終わってしまいます。

月経への向き合い方を心がけや工夫の問題として女性に教えるだけでは、月経を自分だけの個人的な問題として抱え込んでしまうのではないでしょうか。

近年、百貨店における「生理バッジ」システムや、大学のトイレに生理用品を設置する運動「大学に生理用品を」、生理と向き合う女性の物語「生理ちゃん」、性について揺れ動く高校生青春ドラマ「17.3 about a sex」など、生理や性に関する問題を社会で共有しようとするムーブメントが広がっています。

性に関する問題は個人の心がけで解決する問題ばかりではなく、男性も含めた社会全体での問題解決を目指すことも重要なのです。

現状の社会科教育は…

主権者を育成する代表的な教科である社会科で性について扱うことはほとんどありません。

そもそも女性に関すること(例えば「男女共同参画社会基本法」など)について勉強することも少ないですよね。

生理用品がどのように発展してきたのか(戦後までなかなか発展しないままでした)、今性犯罪に対してどのような判決が出ているか、といったことは教科書に書いていなくても歴史分野・公民分野で扱うことができます。

タブーなテーマに思えるかもしれませんが、人権にかかわる問題を社会の視点から学ぶことが必要なのではないでしょうか。

主権者教育としての性教育が求められるのと同時に、主権者教育(社会科教育)としても性の問題を扱うことが今後求められると考えます。

※1:高橋佳子(2013)「思春期女子への月経教育の今後の課題」『青森中央短期大学研究紀要』第26巻、pp.59-65

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