「自立した教師」をどのように育成すべきか?

主権者教育

教師を育成する場所、大学では学生に何を教えることができるのでしょうか。

この議論は渡部竜也『主権者教育論』(2019)でされている議論ですが、社会科以外でも共通することが多いと思います。

よくある批判

まずは教員養成に対するよくある批判について。

「現場で使えない知識が多い」

→東京学芸大学の末松裕基先生は「学級経営論」の授業の中で「教員志望大学生は現場ですぐに役に立つこと(子どもへの接し方など)を学びたがるが、そんなものは現場に出て2年くらい教師をやればできるようになるのだ。しかし現場に出ても授業や学級経営などを新しく作り替えていくことは難しい。そういうことを大学で学ぶ必要があるのだ。そもそもすぐ使える知識はすぐ使えなくなるのだ」といったことをおっしゃっていました。

「社会を経験していないから常識がない」

→大学のゼミの先輩の卒論によると、社会人の経験を生かそうと思っている先生は生かせているけど、特に意識していない先生は生かせていないそうです。だから社会人を経験しさえすればいいというわけでもないそうです。しかし残業代が出ない、パワハラが見過ごされる、といった社会の常識が通用しない職場環境は改善される必要があります。

教員養成の目標:自立した教師を育てること

これまで「カリキュラムを変えれば教育は変わる」と考えられてきました。しかし実際には教科書を音読するだけの教師などほとんどおらず、教師は自分なりに内容を取捨選択し、アレンジをして教育を行っています。

ただ学習指導要領をうのみにして教えたり、あるいは自分の価値観を押し付けたりするのではなく、本当にこの教育が目の前の子どものためになっているのか?ということについて考えられるようになることが重要です。しかし実際にはそれができているのでしょうか。

教員養成のスタート:学生の教育観を壊すこと

私は大学に入学する前は社会科の目標を「暗記力の向上」とか「いつか役に立つ教養を身に付ける」ためだと思っていました。
だから社会科の目標を「公民的資質の育成」と聞いた時は心底驚きました。

まずはこれまで受けてきた教育を見直し、教育への考え方をアップデートすることが、今後の新しい教育をつくるためには必要です。

とはいえ、十数年受けてきた教育への考え方を数時間の大学の講義で変えることは困難です。

岡山大学の桑原敏典先生は「こんなことを言ったら批判されそうだけど、原則、教員になりたい人は学校が好きなんだ。自分が好きだった学校教育を変えること、壊すことは難しい。」とおっしゃっていました。

実習や卒論、学校外での経験など、自分自身が本気で取り組んで考えたことでなければ大学で学んだ知識は残りにくいでしょう。

教育の目的や目標を根本から議論する:エイムトーク

例えば、歴史教師になりたい人は歴史教育の目的を正しい歴史を子どもに伝えることだと考えがちです。
そのために何をどのように教えようか?と考えがちです。

しかし「そもそもなぜ歴史を教える必要があるの?」「公民科だけじゃだめなの?」「明治以降だけじゃだめなの?」といったねらいについての議論「エイムトーク」をする訓練を行うことで、既存の教育を捉えなおすことができます。

また、学校の中だけでエイムトーク(ねらいについての議論)をしても、学校の中だけでの論理に偏ってしまうかもしれません。
生徒を主権者として育てたいなら、学校の外で市民としてのエイムトークも必要になります。

社会を教えるなら教師自身が自立した市民に、主権者に、当事者になる必要があるのではないでしょうか。

≪参考記事≫

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