構成主義的学習とは

主権者教育

今回は私が前々から注目している「構成主義的学習」について簡単に紹介していきたいと思います。

抽象的な話になりますのでご注意ください。

「構成主義的学習」とは

そもそも「構成主義的学習」とは。
一言で言うと「従来のように教師から与えられる知識を取り入れるように学ぶのではなく、自らの学びたいことに応じて自分で学びを構成するような学習」です。

現代のように多様で急速に変化し続ける社会では学校を卒業した後も自分で学び続けていくことが求められており、構成主義的学習が注目されています。

構成主義的学習の特質

構成主義的学習の特質として3点が久保田(2000)によって挙げられています。

  • 学習者が主体的に学習活動に参加し、学習過程を自分自身で点検しながら知識を構築していく過程ととらえる「能動性」。
  • 知識は客観的に存在しているのではなく、特定の状況においてこそ学ばれるとする「状況依存性」。
  • 学習は常に他者とのかかわりあいの中で行われると捉えられる「相互作用性」。

そのほかにも、なぜ学ぶのかを意識させることによって学習活動への動機が高まること、学習者がそれぞれに持っている知識と課題を結びつけることができることなどがメリットとして挙げられています。

構成主義的学習ってどうやって評価するの?

しかし、学習成果ではなく学習を構成する過程全体を重視する学習では、何をどのように評価するべきかが問題となります。

そんな中、学習結果でなく学習過程全体を評価するのなら、学習者自身にしか評価できない部分が存在するのでは?生徒自身に自己評価させるのはどうだろう?ということが議論されてきました。

自己評価には学習者に自らの学習について「なぜ学ぶ必要があるのか」「今までどんなことを学んできたのか」「他者とどのように協力して学べるか」「自分の学習をどのように評価するか」などとメタ的に認知する能力が求められます。

しかし、自己評価を教師が評価しようとすると、評価されるように学びを構成してしまう可能性があるという新たな問題点も生まれます。自己評価を優先することは一見「子ども中心」の評価に見えますが、学習の状況を総合的に把握する努力を放棄した、たんなる子どもへの「迎合」だとの批判もあり、自己評価も簡単ではありません。

構成主義的な考え方をそのまま学校教育に入れるのは「あまりにも理念的すぎる」と高木(2003)は述べていますが、教師が学習を計画・管理・評価するといったこれまでの考え方を大きく転換する考え方であることは間違いないでしょう。

自分のなりたい市民になる

桑原(2016)は「『いつかは、何かに役立つかもしれない』という長期的な期待と、『試験にパスするために必要』という短期的で直接的な目標に基づいて学習者の意欲をつないでいく授業の改善には限界がある。子どもたちは皆、多かれ少なかれ社会に出て活躍したいという気持ちは持っているはずである。活躍の方向性は多様であっても、その気持ちにそって学習を構成すべきではないか」と述べ、教師が設定した市民像を子どもに押し付ける教育からの脱却を主張しています。

構成主義的な考え方を教室の学習にそのまま入れることは難しいかもしれませんが、なんとか工夫して「なりたい市民になる」手伝いができるような教育を目指したいなと思っています。

参考にした文献

・久保田賢一『構成主義的パラダイムと学習環境デザイン』関西大学出版部、2000年

・髙木啓「構成主義的授業における評価の問題-「自己評価」概念を手がかりに-」中国四国教育学会『教育学研究紀要』第49巻、2003年

・中澤静男、田渕五十生「構成主義にもとづく学習理論への転換―小学校社会科における授業改革-」奈良大学『教育実践総合センター研究紀要』第13巻、2004年

・藤木将人、福田正弘「知識構成型社会科授業モデル-ポートフォリオによる知識構成過程のメタ認知-」長崎大学『教育実践総合センター紀要』第5巻、2006年

・平田仁胤「構成主義的アプローチにおける子どもの自己評価に関する考察-ウィトゲンシュタインの後期哲学を視座として-」広島大学大学院教育学研究科教育学教室『教育科学』第28号、2011年

・桑原敏典「学習者の多様性をふまえた市民性教育の実現-なりたい市民になるための社会科」唐木清志『「公民的資質」とは何か―社会科の過去・現在・未来を探る―』東洋間出版社、2016年

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