こんにちは、べっきです。
先日「コロナをテーマに社会科授業を作ってみた」を発表したところ、多くの反応をいただきました。
ありがとうございました!
そして先日、特別に機会をいただいて中高生4人を対象にzoomで指導計画3時間目「コロナから考える『見えない誰かと政治』」をもとに30分授業を行いましたので、その報告をしたいと思います。
授業の目標
一見よさそうに見える政府の対応でも、「見えないけど困っている人」がどこかにいるのではないかと考えようとする態度を育成することを目標として設定しました。
教材観
この授業はコロナ禍において、政治にどのような役割があるのか、政府がどのように国民の生存権を保障すべきか考えることをねらいとしています。
Covid-19に感染しないように休校要請をすることも、生存権の保障ですが、それだけでは困る人も日本社会にはいます。
自分さえよければ政府に言いたいことなどない、という考え方ではなく、現状の対応だけでは困る人がどこかにいるのではないか、という批判的な考え方を生徒には持ってほしいなと考えました。
生徒観
個人情報保護のため詳細に書くことは控えますが、知り合いの紹介で授業に参加してくれた中高生4名とは初対面でしたので、授業前の時点では「様々な学年の生徒がいる」「積極的に発表できる」ということしかわかっていませんでした。
どんな生徒かわからなかったこともあり、教えたいことを詰め込んで教える授業ではなく、生徒の声を十分に引き出す授業を目指しました。
指導観
zoomで授業を行うことは生徒側が疲れやすいと言われていることから、授業時間は30分としました。
また、授業中は積極的に生徒を指名し、双方向的なコミュニケーションをこころがけるようにしました。
生徒の言葉は共有しているパワーポイントに打ち込みながら授業を進めています。
1回限り30分という条件の授業だったので、授業後も考え続けてくれるような授業にしたいと思い、授業後グーグルフォームで、今後も学んだり考えたりしてみたいことについて記入させました。
グーグルフォームでは授業の感想も記入してもらい、個別にフィードバックも行いました。
授業の流れ
T…教師(べっき)の言葉
C…生徒の言葉
①自己紹介・近況を聞く
T:最近どのように過ごしていますか?
C:たまに学校に課題を取りに行っている
C:オンラインで授業を受けることができている
T:不便なことはありますか?
C:部活ができない
C:学習進度が不安
C:進路についての情報がなく不安
※最初に授業の目標をはっきり出さなかったことが反省点です。
②政府の役割を考える
T:不便なことが多いのに、なぜ政府は「全国に緊急事態宣言」「休校要請」を出したんだと思う?
C:学校でコロナがはやってしまうかもしれないから
T:政府には国民の暮らしを守る責任があるからみんなに家にいてもらってるんだね
C:そう
※憲法に書かれてある生存権に触れるのを忘れていた
T:じゃあ、とりあえず子どもはみんな家にいてもらえたらそれだけでいいかな?政府の役割はそれだけ?
C:家で勉強できるように支援したほうがいいと思う
C:9月入学とか
T:「コロナ感染防止のために休校要請」というと一見いいことに見えるけど、それだけだったら見えないところで困っている人が絶対にいます。今日はそのことについて考えます。
③休校でも家にいられない少女とは?
T:学校休みにするので家にいてください、と言われているのに、どうしても家にいられない少女がいます。どんな事情でいられないんだろう?
C:(わからなさそうにしている)
T:コロナの中でも事情があって家にいられない少女を助けるためにこんなピンク色のバスが東京にあります。
C:知ってる!Twitterで見た
T:Twitterで見た?他の人は知らないかな?
T:(新聞記事の一部を読み上げる)
新型コロナウイルスによる外出自粛要請が続く中、育児放棄(ネグレクト)や性暴力などの虐待被害を受けた若年女性らの境遇が深刻さを増している。居場所を失ったり、収入が激減したりしているとして、十代の女性を支援する一般社団法人「Colabo(コラボ)」(東京都)は対策の必要性を訴えている。
(2020年4月19日 東京新聞)
T:「大体みんな」は家にいたら大丈夫かもしれないけど、「見えないけど困っている人」がいる。そういう人のために政治がある。
④見えないけど困っている人を想像する
T:さっき話した少女みたいの他に「見えないけど困っている人」ってどんな人がいるだろう?
※誰にとって「見えないけど困っている人」なのかはっきりしなかった。また、ヒントが少なく考えにくそうであったのも反省点。
C:運動不足の人
T:たしかに!さっきあなた自身が運動不足って言ってたけど、軽い問題だと考えられがちかもしれないよね
C:見えないかはわからないけど、ホテルが休みになるとホテルだけじゃなくてホテルの中にあるレストランも困る
T:たしかに、ホテルのキャンセルが相次いでいますっていうニュースをよく見たけど、泊まるひとがいないってことは、食事もしないってことだもんね、観光地の宿泊施設だけじゃなくて飲食店へのサポートも忘れちゃだめだよね
T:ほかにも、自分からは想像しにくい立場の人ってたくさんいると思います。例えば、高齢者、一人暮らしの人、離島とか町から離れた場所に住んでいる人とか、障害を持っている人とか。
こんなことに困っているだろうなって想像できることもあれば、どんなことに困ってるのかわからないなって立場の人もいると思います。
⑤課題に取り組む
T:そろそろこの授業を終わりにしますが、最後にみんなに「見えないけど困ってる人」の中でも特に「政府に助けてほしい人」をひとつ決めてもらいます。そしてその立場の人に対しての質問をグーグルフォームでしているので記入して私に提出してください。
授業後の課題への生徒の回答&フィードバック
①あなたはどんな「見えないけど困っている人」を助けたいですか?
②これまでに①で答えた人の立場についてどのようなことを学んだり考えたりしたことがありますか?
③これから①で答えた立場の人についてどんなことを学んだり考えたり行動したりしてみたいですか。できるだけ具体的に書いてください。
④その他授業で印象に残ったり、疑問に思ったことなど、感想があれば書いてください。
★生徒へ教師(べっき)が送ったフィードバック
Aさんの回答
①一人暮らしのおばあちゃん
②買い物に行く大変さ、どうしたら暮らしを便利にできるか
③帰省はしづらいけど、歩いていける距離にスーパーがなく、でも一歩外れると都会という場所に住んでいるおばあちゃんを手助けするにはどうすればよいか?
④よい対策の裏には困っている人がいるという話が印象に残りました
★買い物が難しいおばあさんのことに気づけたね。買い物なんて些細なことに思えるかもしれないけど当事者にとっては大問題だよね。京都府亀岡市では市が独自に高齢者買い物代行サービスをしているらしいから調べてみてね。
Bくんの回答
①虐待を受けている人
②自分は悪くないのになんで虐待うけるんだろなーって考えたことがあります
③虐待を受けた人がどのようになるのかまなびたいです
④虐待をうける理由を具体的に知りたい
★今日の授業では「コロナの状況で困っている人」として考えたけど、虐待問題はコロナ関係なく社会で解決しないといけない問題だよね。
ぜひ「虐待 理由」「虐待 コロナ」などで検索して調べてみてね。
Cくんの回答
①教育弱者(おもに、リモート学習に対応できない人、身体障碍者)
②私立、公立の格差。機器を持っていない、環境整備が整ってないなどの人に対しての援助
③啓発活動
④見える化の難しさ。情報化社会の中では叫び声が埋もれてしまう難しさ。
★情報化社会の中で声があげやすくなったかと思いきや、埋もれている声ってたくさんあるよね。
オンラインで学習することが困難な教育弱者に対して啓発も大事だけど、政府がどのような「お金の使い道」や「制度」を決めたら、教育を受けられない人にとって助かるだろう?
Dさんの回答
①現状をはあくできておらず来ている患者の多い(マスクもしてない)ような環境である精神病院
②感染率がどうしても高くなってしまうのではないか
③同居者がネットサポートすれば心のケアも全てオンラインでも可能なのではないか、一度病院自体を閉めても良いのでは?
④政治が行っている「いいこと」も見えないところで困っている人が必ずいるという言葉が心に残った、ネットで投稿するときも、他の立場のことを考えながら発言しなければいけないと思った。
★現状を把握できておらず病院に来ている患者についてニュースとかで見たのかな?まさに「見えないけど困っている人」だね。ネットが使える同居者がみんなにいるとも限らないし、何か困難を抱えていて、かつ一人暮らしで孤立してしまう人に何ができるか大きな課題だね。
今後検討したいこと
皆さんにご意見を伺いたいのは以下の通りです。
・「コロナ×政治」「コロナ×社会保障」というテーマでは、他にどんな切り口がかんがえられるでしょうか?
・今の政府の対応について考える時、政治的中立性についてどのような配慮をしていますか?
・答えがひとつでない課題をどのように評価、フィードバックするのが望ましいでしょうか?
・子どもの構成的な学び(下記事参照)をどのように保障できるでしょうか?(授業前に持っていた考えと、授業で得た視点と授業後も考えたいと思える態度を自分でつなげられるような学習にしたいと前々から考えています)
どうぞよろしくお願いします!
コメント
授業後も考え続けてくれるような授業、素敵です!こういった授業が、人数に関係なく、常時行われてること、希望します。