【調査結果発表】「署名」という行為を大学生はどのようにとらえているか?

主権者教育

こんにちは、べっきです。

先日(一部は現在も)、私の出身大学である東京学芸大学で、学費返還などを求める署名運動が2つの団体によって行われていました。

そこで、2020年5月3日~5月5日の期間で「東京学芸大学における学費返還等を求める署名活動に関する意識調査」を個人的にやってみたので結果を発表したいと思います。

東京学芸大学でどんな署名活動が行われていたのか、なぜこの調査をしようと思ったのかについては以前の記事で書いたのでお読みください。

調査方法

3つの方法で調査を行いました。

ひとつはTwitterのアンケート機能。「閲覧用」以外の選択を押した人(学芸大の関係者と思われる)331人が回答してくれました。

もうひとつがグーグルフォームでのアンケート。なぜ署名したのか、なぜ署名しなかったのか、といったことについて質問しました。答えてくれた人は5月5日正午時点で60人です。

内訳としては大学1年生が5%、2年生が15%、3年生が33.3%、4年生が26.2%、その他(院生や卒業生など)が20%でした。

アンケートの回答数が多くないこと、特に1,2年生の回答が多く集められなかったのは今後の課題です。
以下の考察は母数が少ない調査について考察していることに注意してください。

東京学芸大学における学費返還等を求める署名活動に関する意識調査
こんにちは。東京学芸大学卒業(2020年3月)、岡山大学大学院教育学研究科修士課程1年の別木萌果と申します。現在東京学芸大学では「自治会」と「求める会」によって学費返還等を求める署名活動が行われていますが、大学生・大学院生・関係者が署名活動(社会的な活動)に対してどのような意識を持っているのか調査したく、ご協力をお願い...

そして、アンケートだけでは読み取れないことについて6人にインタビューを行いました。

調査結果①大学生は学費を返還してほしいと考えている?

両方署名しなかった人36人(全体の60%)で一番多い理由は「要求の内容に共感しなかったから」でした。
具体的にはどんな点で共感できなかったのでしょう?

アンケートでは「国立大学法人であり、大学側に学費返還に関して突き付けるのは酷な気がした」「授業料免除を学校からもらっているため、署名をするような立場ではないと感じた」といった声が寄せられています。

Bさん(4年生・両方署名していない)は「春休み中、教採の面接票の添削を先生にしてもらっていた。自分が大学生であることの恩恵は受けていると思った」ため、署名しなかったと答えています。

「学費返還」という、学生の賛同を得やすそうな事柄ですが、賛同できない学生が一定数いることがわかります。

両方に署名した人で一番多かった理由も「要求の内容に共感したから」で、ここでは11人全員が選んでいます。

このことに関して、Cさん(3年生・両方署名した)は「内容にすべて賛同したわけではない。 授業料を一律支援とかは現実難しいと思う。でも、学生が困っていることを学校に伝えるということに賛同し、団体を応援したいと思った」と答えています。

学費返還などの要求の内容すべてに賛同したわけではないが、学生が困っていることを伝えることそのものに価値を感じ、署名をした人もいることがわかります。

調査結果②署名する人=実際に困っている人?

1.自分は困っていなかったけど署名した人

「自分が実際に困っていたから」を選んだ人が3人(27%)であるのに対して、「自分は困っていないが、誰かのためになるかもしれないと思ったから」を選んだ人は9人(81%)でした。

Dさん(3年生・両方署名した)は「どちらの署名も学科のグループラインでまわってきた」「自分が困っていたわけではなかったけど、テレビで生活に苦しんでいる大学生のニュースを見て、自分が力になれたらいいなと思った」と答えてくれました。

2.困っていなかったから署名しなかった人

反対に、両方に署名しなかった人のうち9人が「自分が困っていなかったから」と答えており、理由のひとつとなっています。

Aさん(3年生・両方署名していない)、Bさん(4年生・両方署名していない)は親じゃなくて自分が授業料を払っていたら署名していたかもと振り返っていました。

「自分は困っていないけど署名した」「自分は困っていなかったから署名しなかった」、この両者の違いはなぜ生まれるのでしょうか?

調査結果③内容よりも〇〇?

1.内容よりも団体への信頼?

「自治会の要求にのみ署名した」と答えた人は10人いました(全体の17%)。

そのうち署名した理由として「活動している団体を信頼していたから」を選んだ人が5人(50%)おり、この項目に関しては「両方署名した」人よりも高い結果となっています。

このことについてCさん(3年生・両方に署名)は「自治会は普段から知っている団体だったから署名しやすい人もいたのでは」と話しています。

逆に、求める会にのみ署名した人は2人で全体の3%でした。
Eさん(学芸大卒業生・求める会のみ署名)は「求める会のメンバーから個別でメッセージをもらい、ある程度正統性のある要求だと思ったので署名した」と答えています。

2.内容よりも言い方?

「要求の言い方、表現方法が共感しにくかったから」と答えた11人のうち、「要求の内容に共感しなかったから」も選んでいるのは3人です。

つまり、「要求の内容に共感しなかったわけではないが、要求の言い方に共感できなかった」人が8人(署名しなかった人の内の22%)います。

Bさん(4年生・両方署名していない)は「知り合いが自分の言葉で呼び掛けてくれたらわかる」「堅苦しい、長い文章は正直何言っているのかわからない、ちゃんと読んだらわかるかもしれないが読む気にならない」と話します。

3.政治的中立とは?

また、グーグルフォームでのアンケートで「求める会は政治的中立に欠けている(から署名しなかった)」と回答した人がいました。

政治的中立っぽい言い方だったら受け入れられやすかったのでしょうか?

「求める会」は署名を文部科学省に提出すると言っているので明らかに「政治的な活動」ですが、学校のみに提出する「自治会」の署名はどうでしょうか。

政治的中立とは何か、別の機会に考察したいと思います。

4.署名という行為に抵抗がある?政治的な活動は怖い?

調査を行うにあたって私が知りたかったことは「署名しない人は、署名という行為そのものに抵抗を感じているのだろうか?」ということでした。

しかし、署名しなかった理由として「署名と言う行為そのものに抵抗を感じたから」と答えた人は5人(14%)にとどまりました。

その一方で、選挙や署名、募金やデモなどに参加経験があるか聞いたところ、両方署名した人、両方署名していない人の間で署名経験に差があることがわかりました。

調査結果④そもそもTwitterを見ていない?

1.署名したか?しなかったか?調査方法による結果の違い

私が個人的に行った調査(Twitterアンケート機能、グーグルフォーム)では細かい差はありますが、おおよそ、両方またはどちらかに署名したのは4割、どちらにも署名していないのは6割でした。

しかし実際はどうでしょう。

自治会執行委員会は774の署名を大学に提出したと発表しました。

学芸大は1学年およそ1000人なので4学年だと4000人。
単純計算すると19.4%(774筆÷4000人)の人が自治会に署名した計算になります。

また、実際には大学院生や卒業生なども署名できるため、現役の学部生が署名した割合は19.4%より低いと考えられます。

Twitterでの集計と実際の数値には大きな差ができてしまいました。

2.なぜ実際の結果とTwitterの調査結果にずれがあるの?

実態と調査にずれが生じるのはよくあることです。インターネット上の調査なので本当に学芸関係者が答えているかどうかもわかりません。

しかし、2割分も差がつくのはなぜか、インタビューから考えてみましょう。

これはほんの一例ですが、Twitterで見えている世界=日本の世論の縮図、ではないことに改めて気づかされます。
Twitterヘビーユーザーの私はよくこの事実を忘れてしまいます。

Bさん(4年生・両方署名していない)も「私は内容に賛同しなかったので署名しませんでしたがTwitterや友達の話から8割くらいは署名していると思っていました」とインタビューで話してくれました。

Twitterをもっと多くの人が利用していれば署名がさらに多く集まった可能性も考えられます。

3.社会の問題を考える場所にTwitterはなれるか?

私自身はTwitterで政治家や社会活動家を多くフォローしており、最近の社会問題についての様々な意見を知る場所としてTwitterが有効だと考えています。

しかし宮脇陸さんが記事の中で「誤解を恐れずに言えば、声の大きな活動家の意見が一般市民の意見を上書きするのが「ネット世論」です。」と書いているように、活動家の意見を知ることはできても本当の世論の声を聞くことはできません。

MMD研究所の調査によると20代のTwitterを「現在利用している」と答えた人は65%と少なくない数値ですが、「過去に利用したことがある」(現在は利用していない)と答えた人も23.6%おり、実際にTwitter離れが起きているのかもしれません。

過去と比べてTwitterの使い方がどのように変わったのか、Twitterを社会のことを知る手段として利用している人はどのくらいいるのか、調査があると主権者意識の育成とSNSの関係についてもっと考察できるだろうなと思います。

おわりに

考察すべきことが多くまだうまく整理できていませんが、また、調査標本数が少ないので信頼できる調査と言い切れない部分がありますが、「若者は若者向け政策を支持するか?」「政治的中立はなぜ重んじられるか?」「Twitterでの社会運動の可能性と限界は何か?」など考える材料の一つになりそうです。

よく「若者の投票率が低いと若者の声が政治に届かない」と言われますが、若者の声と言ってもひとくくりにはできないなと改めて感じました。

この調査について不明瞭なこと、さらに考察できそうなことがあればご意見ください。
調査結果の詳細も希望があればお送りします。

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コメント

  1. DIEGAKUSEI より:

    政治的中立を求めることは、政治性を排除しようとする営みであり、ある意味政治的なものだとも思います。政治が関わらない領域などほとんどないのも現実だとは思いますが、そこに気づいていたとしても難しいと思うひとはいるとは思います。

    署名と簡単に比較はできないですが、投票行為が無記名であることと比べてハードルが高いのは確かだとも思います。個人情報に対する意識が高くなっているからこそ(逆に低い人もいますが)、署名活動は結構難しくなってきている気もします。

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