【たたき台】コロナをテーマに社会科授業を作ってみた

主権者教育

3時間目:コロナから考える「見えない誰かと政治」

★1時間目に学んだこと「政府はみんなの生存権を守るために休校にしている」を振り返る。

①なぜ「少女」は緊急事態宣言の中「家にいられないの?

★今小学校中学校も高校も大学も休校になっていて、子どもは基本的に家にいるはずであるにも関わらず、家にいられない少女がいることを説明する。理由を予想させる。

2020年4月19日東京新聞を読む。

本文はリンクよりお読みください。

育児放棄や性暴力などの虐待を受けてこのカフェに来る少女が多くいる。命を守るための「外出自粛呼びかけ」が逆に危険となっている。

②そもそもこの少女はコロナだけのせいで生活が危機に陥っているの?

★そもそもこの少女はコロナのせいで生活が危機に陥っているのだろうか?新聞を読んで考えさせる。

「飲食店で働く少女(17)は両親の育児放棄によって妹の生活費も稼いでいる」
「虐待を受けていても家を飛び出すほどではないと考えていた少女たちが、外出自粛で耐えられなくなってきている」
「もともと苦しい人を支援してこなかったつけがコロナの影響によって顕著に現れてきている」

2020年4月19日東京新聞朝刊「<新型コロナ>家にいられない少女救え 虐待悪化 外では性被害懸念」

→新聞記事の「飲食店で働く少女(17)は両親の育児放棄によって妹の生活費も稼いでいる」の文から、コロナが蔓延する前から苦しい生活であったことがわかる。

★この少女の他に、「以前も困っていたが、コロナでさらに困ってしまった、困っている人が目に見えるようになった」事例はあるか予想させる。

→妊婦、障害者、寝たきりの人、一人で暮らす高齢者、インターネットを使えない人、シングルマザー、ホームレス、非正規雇用で働く人、貯金がない人など。

→社会には支援がないと最低限度の生活ができない人々がいる。
(子どもも支援なく生きられない存在である)

③困っている人の生活を支えるためにどんな仕組みがあるの?

★公民の教科書「社会保障のしくみと財源」のページを開き、社会保障制度の理念と仕組みについての説明を読む。

→社会保障制度とは、当事者の力だけでは解決することが難しい、生活上の不安を取り除こうとする仕組み。

★具体的な仕組みを、コロナに関連して説明する。

社会保険…コロナで入院したときに保険に入っていればお金の一部を負担してもらえる
公的扶助…コロナの影響で仕事がなく貯金もなくなったとき、生活保護を受けられる
社会福祉…子供が家でも授業を受けられるようにネット環境を整備する支援をする
公衆衛生…感染が拡大しないように外出自粛を要請する

④どうしたら困っている人の声が政府に届くの?

→憲法25条に書いてあるように、政府には国民の「最低限度の生活」を保障する責任があるが、今だけでなく普段から、様々な事情で「最低限度の生活」が難しい人がたくさんいる。

★様々な事情で生活に困っている事情(例:新聞に登場する少女)は多岐にわたり、支援してほしくても政府に声が届かないことも多い。「誰に」「何を」してもらえば当事者の声が政府に声が届くか考えさせる。

  • 議員に普段から立場の弱い人へ聞き取り調査を行ってもらう
  • メディアに取材してもらう
  • 当事者にインターネットで意見を届けられるシステムを活用してもらう
  • 議員にいろんな立場の人が議員になれるような社会をつくってもらう
  • 自分には何ができる?

⑤これから考え続けなければいけないことはなんだろう?

いつ収束するのか、1年後どのような日本になっているのか、先の見通せない日々が続いている。「みんなでがんばろう!乗り切ろう!」と雰囲気もある中、ただ政治の方針に従うだけでなく、一歩立ち止まって複雑な問題を考えようとする態度が求められていることを話す

★3時間の授業を振り返り、さらに「立ち止まって考えてみたい論点、疑問点」を記述する。

あとがき

コロナをテーマに社会科の授業を作ってみたいと宣言してから1か月半もたってしまいました。
その間にニュースも変化するのでその都度内容を更新することが大変でした。

また、授業を作っている途中で3時間に収まらなくなってしまい、泣く泣くカットした話がたくさんあります。
例えば、「無限に国債を発行してもよいのか?」、「国と地方、どちらの意思決定が優先されるべきか?」、「スペイン風邪から何が学べるか?」、「営業を続けるパチンコ屋に政府はどのような対応が必要か?」など。
この話題で膨らませたら面白そう、というのがあればぜひ教えてください。

また、この授業についてすでに複数の先輩方に見てもらったのですが、「この内容を3時間でやるのは詰め込みすぎ」「中3には難しい?」などご意見もらっています。
指導上のアドバイスなども是非ください。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

≪参考記事≫

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コメント

  1. B15 より:

     面白い内容の授業だなと感じました。特に3時間目については子どもに近い問題かつ政府の外出自粛の政策が悪い方向に影響している例であり、最後の「政府の方針に従うだけではなく、これから自分はどう行動すべきか考える」という態度が求められていることを伝えるにはもってこいの内容だと思います。しかし、逆に子どもに近すぎる分、実際にこのことで悩んでいる子どもが教えられる側にいる可能性は見る必要があります。
     また、単元構成として1時間目が国内政治・憲法、2時間目がグローバル化、3時間目が国内政治とコロナ見る視点を変えています。多様な視点を子どもに提供できるというメリットはありますが、3時間目と1,2時間目の内容がつながっていないようにも感じます。ここではいっそ「コロナと国内政治」「コロナで見るグローバル化」と視点をより絞った単元指導計画を分けて作るのはどうでしょうか。
     細かいことではありますが、2時間目④「なぜ海外の入国者を止められなかったの?」で使われている教材ですが、観光客に産業が大きく支えられていたということを言いたいのであれば、「産業全体の中の観光(特に外国人)」の割合を示した方がいいかと思いました。

  2. saki より:

    興味深く読ませて頂きました。
    私が中学3年生でこの授業を受けたらと思うと、あまり前のめりにならないかもです。
    現在、情報は溢れていて、興味があればいろんな方法で知ることが出来ます。
    元々政治に興味を持っている生徒、また実際コロナで困った事態になっている生徒(例えば幼い妹、弟がいて親の仕事に影響が出ている、親が飲食業を営んでいるなど)には、響くことはあるかもしれませんが、その他の生徒にどこまで響く内容かというと、どうなんでしょうか。(憲法とか出てきてところで、…となるかも、私でしたら。テストの為に覚えるかもしれませんが。)
    今の暮らしと政治の関わりに興味を示して、理解することを目標とするなら、まず、生徒が興味を持ちそうな項目1つ、2つに絞り、生徒が「なるほど~」ボタンがあるなら、「なるほど~」「なるほど~」と押したくなる内容から、このコロナの件をきっかけにするのはいかがでしょうか?「政治は、自分の生活の影響がある」という印象を持つことで、別の項目についても、聴き方、伝わり方が違ってくるのではないでしょうか?
    働きだして税金を納めたり、子育てしてると、政治についても気になることはあっても、やはり、ここでも、政治に興味のある大人、本当に困ってるいる大人しか目を向けない社会があるかもしれません。
    そう思うと、政治と暮らしがつながっていると理解する教育の時間は大事と思います。教科書の内容をただ覚えてよしとする教育でなく、きちんと伝えて理解してもらう教育を受けた若者が社会人になった時には、今と違う社会が出来ているのではないでしょうか?
    私個人的には、学生時代、全く政治に興味を持つことなく過ごした生徒のひとりです。ただ、中学生の時に、「税について」の作文を書く機会があり、初めて、「税金て何?」と親に尋ねたことがあり、親の解答は、お酒を取り上げ、税金がかかっている話をしてくれて、とてもわかりやすく理解出来て、それが、社会人になって政治に興味を持つ時に、政治は意外に身近なことが関係していると考えられるようになりました。
    あと気になりましたのは、「正義」という言葉。「正義」は、いろんな方面の「正義」があり、ひとつの方面からの「正義」だけが全てではないと思います。
    ブログ、生徒に伝えたいという熱い思いが溢れていて、素敵と思います。

    • littlecyclamen littlecyclamen より:

      返信が遅くなりすみません。ご丁寧にメッセージいただきとてもうれしいです。読んでいただきありがとうございます。いただいたご指摘は今後の授業づくりに生かせていただきます!

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