【たたき台】コロナをテーマに社会科授業を作ってみた

主権者教育

指導計画

ここから3時間分の授業計画を紹介します(量が多くなってしまったので3時間では終わらなさそうですが)。

「★」は教師の働きかけや声かけ、「・」は予想される生徒の反応、「→」は引き出したい事柄、押さえたい知識を示しています。

1時間目:コロナから考える「私と政治と憲法」

①改めて考えてみよう…学校の役割とは?

★生徒に最近の生活の中で困っていることはないか聞く

  • 友達と会えなくてさみしい
  • 家にずっといるのは退屈だが、かといってゲームをしていると親に怒られる
  • 部活最後の年なのに練習できないし、大会もなくなるかもしれない
  • 今年高校受験なのに学校でも塾でも勉強できない

★上がった項目から、改めて学校の役割(学校に行くことでできること)を考える

  • 全員が平等に学習を受けることができる
  • すぐに先生に質問できる
  • 運動ができる
  • 部活ができる
  • 給食が食べられる
  • 友達と話せる
  • 親が仕事に行きやすくなる

→日本はまだ感染者数が増え続けている状態で、学校は三密(密閉、密集、密接)を避けられない環境でもあることから再開が難しい状態。しかし学校がなくなると困ることも多いよね(私は困らない!と言う人ももちろんいる)

②そもそもなぜ今まで学校に行けていたの?

★教科書で日本国憲法第26条(教育を受ける権利)を読む。

日本国憲法第26条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育はこれを無償とする。

そもそも「政治」によって憲法で教育を受ける権利が保障され、みんなが通える学校が作られている。

★ここで法律と憲法の違いを説明する。

→みんなが守るのは法律。好き勝手な法律や仕組みを政治家が作らないように憲法が国家権力を縛っている。これを立憲主義という。

→しかし「政治」による休校宣言のせいで教育を受ける権利が制限されている。憲法違反では?

③なぜ政府は私たちの「教育を受ける権利」を制限しているの?

★憲法では私たちに教育を受ける権利があるって書いてあるのに政府が休校宣言をしたのか、予想させる
→今はコロナにかかったら命の危険もあるから?

★教科書を読み「公共の福祉」概念を今の状況に置き換えてみる

わたしたちの社会生活では,人権は他の人の人権を侵害してはならないという限界があります。また,社会の共同生活のために制約を受けることがあります。 このように人権は,「公共の福祉」によって制限されることがあります。

→政府は人権を「できる限り」守ってはくれるけれど、「全面的に」守ってくれるわけではない。

★憲法第25条(生存権)を読む

日本国憲法第25条
第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する
第2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない

→政府は日本社会における共同生活のために、個人の「教育を受ける権利」よりも、国民全員の「生存権」を優先して保障しようとしている。

④政府はどうやって「生存権」を保障しようとしているの?

★休校要請以外にコロナ対策として政府が行ったことについて知っているものを発表させる。

  • マスク配布
  • 10万円支給
  • 緊急事態宣言を出して外出自粛を呼びかける

★マスクや現金給付以外にどのように予算が使われようとしているのか気づいたことを発表させる。(「生活困窮者に30万円支給」ではなく、「全員に10万円支給」に政府は方針を変えたことに注意)

https://www.jiji.com/amp/article?k=2020040600747&g=eco

「生存権」ももちろん重要であるが、「教育を受ける権利」や「働く権利」もないがしろにしてはいけない。いつ学校を再開させるか、今の状況でどのように教育を受ける権利を保障することができるか、課題となっている。

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コメント

  1. B15 より:

     面白い内容の授業だなと感じました。特に3時間目については子どもに近い問題かつ政府の外出自粛の政策が悪い方向に影響している例であり、最後の「政府の方針に従うだけではなく、これから自分はどう行動すべきか考える」という態度が求められていることを伝えるにはもってこいの内容だと思います。しかし、逆に子どもに近すぎる分、実際にこのことで悩んでいる子どもが教えられる側にいる可能性は見る必要があります。
     また、単元構成として1時間目が国内政治・憲法、2時間目がグローバル化、3時間目が国内政治とコロナ見る視点を変えています。多様な視点を子どもに提供できるというメリットはありますが、3時間目と1,2時間目の内容がつながっていないようにも感じます。ここではいっそ「コロナと国内政治」「コロナで見るグローバル化」と視点をより絞った単元指導計画を分けて作るのはどうでしょうか。
     細かいことではありますが、2時間目④「なぜ海外の入国者を止められなかったの?」で使われている教材ですが、観光客に産業が大きく支えられていたということを言いたいのであれば、「産業全体の中の観光(特に外国人)」の割合を示した方がいいかと思いました。

  2. saki より:

    興味深く読ませて頂きました。
    私が中学3年生でこの授業を受けたらと思うと、あまり前のめりにならないかもです。
    現在、情報は溢れていて、興味があればいろんな方法で知ることが出来ます。
    元々政治に興味を持っている生徒、また実際コロナで困った事態になっている生徒(例えば幼い妹、弟がいて親の仕事に影響が出ている、親が飲食業を営んでいるなど)には、響くことはあるかもしれませんが、その他の生徒にどこまで響く内容かというと、どうなんでしょうか。(憲法とか出てきてところで、…となるかも、私でしたら。テストの為に覚えるかもしれませんが。)
    今の暮らしと政治の関わりに興味を示して、理解することを目標とするなら、まず、生徒が興味を持ちそうな項目1つ、2つに絞り、生徒が「なるほど~」ボタンがあるなら、「なるほど~」「なるほど~」と押したくなる内容から、このコロナの件をきっかけにするのはいかがでしょうか?「政治は、自分の生活の影響がある」という印象を持つことで、別の項目についても、聴き方、伝わり方が違ってくるのではないでしょうか?
    働きだして税金を納めたり、子育てしてると、政治についても気になることはあっても、やはり、ここでも、政治に興味のある大人、本当に困ってるいる大人しか目を向けない社会があるかもしれません。
    そう思うと、政治と暮らしがつながっていると理解する教育の時間は大事と思います。教科書の内容をただ覚えてよしとする教育でなく、きちんと伝えて理解してもらう教育を受けた若者が社会人になった時には、今と違う社会が出来ているのではないでしょうか?
    私個人的には、学生時代、全く政治に興味を持つことなく過ごした生徒のひとりです。ただ、中学生の時に、「税について」の作文を書く機会があり、初めて、「税金て何?」と親に尋ねたことがあり、親の解答は、お酒を取り上げ、税金がかかっている話をしてくれて、とてもわかりやすく理解出来て、それが、社会人になって政治に興味を持つ時に、政治は意外に身近なことが関係していると考えられるようになりました。
    あと気になりましたのは、「正義」という言葉。「正義」は、いろんな方面の「正義」があり、ひとつの方面からの「正義」だけが全てではないと思います。
    ブログ、生徒に伝えたいという熱い思いが溢れていて、素敵と思います。

    • littlecyclamen littlecyclamen より:

      返信が遅くなりすみません。ご丁寧にメッセージいただきとてもうれしいです。読んでいただきありがとうございます。いただいたご指摘は今後の授業づくりに生かせていただきます!

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